しかし、その時の僕は、怒りを感じる感覚が麻痺するほど、心が凍てついてしまっていた。
再び、大阪府警の留置所へ収監された。
ここでまた、約3日を過ごす。
家族とも連絡は取れない。
振り出しに戻ったのだ。
驚いたことに、入れ墨ベテランは、まだそこに居た。
彼は、もう数カ月もここに居るのだという。
移送施設に空きがなかったり、警察が取り調べしやすいためであったり等の理由で、留置場が、[代用刑事施設]として使用されることは、違法ではないらしい。
しかし、元々長期収容のためには造られてはおらず、基本的には、拘束された者の身柄について、釈放するか、起訴を目指すかの決定までの2泊3日程度のための収容施設であるため、当然、プライバシーなど考えられていないし(いや、拘置所にもプライバシーなど無いが、まだ少しは人間らしい時間は過ごせる)、人ごとながら、切なくて胸が痛んだ。
まぁ、本人は、いたって意気軒昂(いきけんこう)で、やはり前の時同様、僕の行く末の方を気遣ってくれたのだが。
もう1人の新顔は、窃盗で捕まったという若者だったが、彼も、「何故こんな好青年が?」と思えるような素直で気のいい子だった。
加瀬弁護士をはじめ、僕のハラスメントや懲戒解雇に関わった人間の方が、はるかに社会的地位は高く、文化的な暮らしをしているのだろうが、人を貶めることに一分の胸の痛みも感じず、他人の人生に何の共感も持てない、代理想像能力の欠如した魂レベルの者であると、僕は痛感せざるを得なかった。