2│DOHaDは日本語で何と呼ぶか
1│日本語名称制定の試み
DOHaDは、Developmental Origins of Health and Disease の略語ですが、まだ、適切な日本語訳がありません。FOAD(Fetal Origins of Adult Disease) が「生活習慣病胎児期起源説」という日本語の学術用語としてピッタリ収まりますが、どうもDOHaDは日本語にすると、あまり収まりがよくありません。
例えば、原語を日本語に直訳してみると、「健康と病気の発達起源説」で、本来の言葉の意味が伝わってきません。DOHaDは専門家の間では、そのまま使用して何の違和感もありませんが、一般に向けて発信する場合は全く意味不明で、この重要な学説を広めるのに大きな障害となっていました。
この問題を解決するため、第4回日本DOHaD研究会(昭和大学、板橋家頭央会長)で、「DOHaDの日本語名称について」というワークショップが行われました。演題と発表者は以下の通りです。
①至適名称を求めて─DOHaD研究の現況と未来/福岡秀興(早稲田大学)
②ネーミングが持つ力/中西和代(株式会社風讃社)
③母子双方に欠かせないケアを伝えるキーワードとは?/西沢邦浩(日経BP社)
④全てを網羅するDOHaD の日本語名はあるか?~臨床医の立場で考える~/中野有也(昭和大学)
⑤DOHaD日本語名称に関する提案~周産期を目前にした若年層の意見から~/原馬明子(麻布大学)
2│DOHaDは日本語に収まりにくい
このワークショップで、DOHaDの日本語訳について、侃諤々侃(けんけんがくがく)、討論が行われ、多くの提案がなされました。しかし、いずれも帯に短し、たすきに長しで、いつの間にか会員の熱も冷め、「DOHaD」でいいんじゃないのという雰囲気で現在に至っています。
ちなみに、これまでDOHaD の日本語訳として30以上の語が検討されました。そのいくつかを挙げてみます。
「発育環境と健康」「発達期が決定する生涯の健康」「発達期環境起因疾患」「胎児期に始まる健康と疾病」「健康・疾病の発育起源」「胎内健康プログラミング」「胎内健康起因科学」「小児発達起因性疾患と健康研究」などですが、いずれも人々にインパクトを与える学説名になりません。