俳句・短歌 歴史・地理 歌集 日本列島 2020.08.14 歌集「秋津島逍遥」より三首 歌集 秋津島逍遥 【第6回】 松下 正樹 “忘れえぬ旅をまたひとつ三十一文字に封印す” ――日本の面白さに旅装を解く暇もない 最果ての無人駅から、南の島の潮の香りまで、まだ見ぬ土地に想いは募る。 尽きせぬ思いが豊かな旅情を誘う、味わい深き歌の数々を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 盂蘭盆に僧のつどひて声ひくく ながき読経に魂をしづめむ いとけなき秋蒔小麦萌えいでて 結ぶ朝露きらきらしけり せめぎあひゆらぐ流氷塊に乗り 童ごころにしばしあそべり
小説 『にゃん太郎の冒険物語』 【新連載】 作間 瓔子 僕をかわいがってくれたのは初めだけ。そのうち気のない挨拶をして、他の用事に移ってしまうようになった。 最近は猫ブームらしいが、僕らに癒やしを求める人間たちの何と多いことか。一口に猫と言っても、人間に人種があるのと同様、猫にも品種があるのだ。僕はおそらく『ボンベイ』という種類に属していると勝手に思っているけれど、本当はただの雑種なのかもしれない。自分で言うのも何だが、僕ほど賢い猫はそんなにいないと思う。鳴き声も頭も良いうえに、漆黒のツヤツヤとした毛並みと、スマートに引き締まった体。シュッとした尻尾…
小説 『眠れる森の復讐鬼』 【第12回】 春山 大樹 「何でこんなことになったんだ!」「何の異常もなかったのに、突然心電図がフラットに…」「そんな馬鹿なことがあるか!」 「俺は四一六号室の金清(かねきよ)だ。金に汚くないから金清。よろしくな。君は?」「四一八号室の小瀬木です」「四一八号室? 個室じゃないか。若いのに羨ましいなあ。俺なんて四人部屋で碌に手足も伸ばせんよ。若いのに稼ぎがいいのかい?」「そんなんじゃありません」(全くこのオヤジ、野次馬に来たのか雑談に来たのか、やたら質問ばかりしてくる。こんな奴とはあまりお近づきになりたくない)そう思った海智は金清を差し…