厚生労働省が、先進医療を実施している医療機関の一覧を公表しています(注1)。現時点では私の科を受診する患者さんにお勧めしたい治療はありません。ちなみに、ある保険会社の生命保険で先進医療保障(特約)をつけると月額100円程度多く支払うことになります。
「患者申し出療養」は選択基準を満たさない治験や先進医療などの治療を受けたい患者さんが国に申請するものです。これも厳しい種々の基準を満たした特定の患者さんに適応され、一部公的保険の適用になります。
厄介なのが最新医療とか最先端医療と言われる治療です。例えば、インターネットの検索で「最新」「最先端」「がん治療」と入力してみてください。800万件以上が検索できます。
その多くは公的医療保険の対象にならない、疾患に対する陽子線・重粒子線などの粒子線治療(質問4)、種々な免疫治療(質問5)ですが、一般的には代替医療(質問6)に分類されるべき健康食品までが表示されてきます。いかに最新医療とか最先端医療という言葉に玉石混交の治療が含まれるのか驚くばかりです。
やはり標準治療が安心
インターネットでがん治療に関して調べている患者さんやご家族は非常に多いのではないでしょうか。最新医療とか最先端医療と宣伝している治療は標準治療と同等かそれより優れている根拠はありません。
医療費は全額自己負担になるため、患者さんは大きな金額で自分の体を賭けることなり、場合によっては手ひどい損失を負ってしまう危険もあります。ですから、私は患者さんにはこのような治療は決してお勧めしません。
(注1) 厚生労働省・先進医療を実施している医療機関の一覧(閲覧日:2023年5月1日)https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan02.html
【前回の記事を読む】「手術できない、治る見込みがない=死ぬ」「治癒が期待できる腫瘍=長生き、治癒が難しい腫瘍=長生きできない」という訳ではない