入学式で名前がない!
直江津中学校は市内五つの小学校から生徒が集まり、一学年で十五クラスもあるマンモス中学でした。入学式当日は母の都合が悪かったのか、父がつき添ってくれました。
正面玄関で受付を済ませ、告げられた教室に行くはずだったのですが、またもやハプニング!
「該当する名前がない」と言われ、父はビックリ! 私はプライドを傷つけられたような気がして、「だから直江津なんか来たくなかったんだ!」とわけの分からないことを言って父に八つ当たり。
困った父は、玄関に貼り出された名簿の中から私の名前を探し出そうとしましたが、ないものはないのです。そのうち玄関には私と父の二人だけになってしまいました。
「もういいよ、帰る!」と私が言うと、「まあ、待ちない!(待ちなさい)二組におまん(あんた)とよく似た名前があったから、行ってみよう!」と父は私の背中を押して二組の教室に連れて行きました。
「すみません、こちらに斎藤栄子さん(私は斎京栄子)はいますか?」と父が尋ねると、「はい」と女の子の声。
「ほら、やっぱりいた! 帰る!」と、私が本気で帰ろうとすると、一組の教室から男の先生が顔を出し、「何したね? おや、斎京さんじゃないかね~」偶然にもその先生は、父の師範学校のときの同級生だったのです。
話を聞いた先生は、「そうかね~。じゃ、こっちに来ない~(来なさい)」と言って、廊下に並び始めた一組の一番前に私を連れていき、そのまま入学式が行われる体育館に入場。こうして私は、父と先生のお陰で直江津中学校に入学することができたのでした。