板ばさみになって自殺した校長先生
現在、文科省や教育委員会は「学習指導要領は法的拘束力を有する」「法規としての性質を有する」としています。
文科省のサイトには、「昭和二十年代後半から、日本教職員組合は国の教育政策に対して激しい反対闘争を繰り返してきた。~(中略)~しかし、五十一年五月に旭川学力調査事件の最高裁判決が出され、学習指導要領には法的基準性がある旨の判断が示され、戦後長らく争われたこの問題に最終的な決着がついた」とあります。
教育委員会のサイトにも、「学習指導要領は、国会で制定された『学校教育法』の規定をうけて『学校教育法施行規則』で定められており、法体系に位置付けられていることから、国民の権利義務に関係する『法規』としての性質を有するものと解されます」(広島県教育委員会)とあります。
実際、過去には学習指導要領に違反した教師に対して厳しい懲戒が科され、1999年の「日の丸掲揚・君が代斉唱」事件では自殺者まで出ています。
当時の広島県教育委員会は県立高校の校長宛に、「卒業式及び入学式などにおける国旗掲揚及び国家斉唱の指導が学習指導要領に基づき適正に実施される旨」と通達し、国旗掲揚と君が代斉唱を命じました。
世羅高校では多くの教職員が通達に反対し、板ばさみになった校長が自殺しました。ほかの県でも「君が代」の起立斉唱を拒否した先生に厳しい懲戒処分が科されました。
2020年には新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三首相(当時)は全国すべての学校に対して臨時休校を要請し、全国一律の休校となりました。
突然の休校に現場からは、「授業が全部終わっていないがどうしよう」とか「このままで各学年の修了や卒業を認定してもよいのか」などと不安や戸惑いの声が上がりました。
文科省は「標準授業時数を下回った場合においても、下回ったことのみをもって学校教育法施行規則に反するものとはされない」「臨時休業等のやむを得ない事情によって卒業式を行わなかったとしても、学習指導要領の定めに反するものではない」などの異例の通達を出し、ひとまず混乱はおさまりました。
しかし、一番の犠牲者は突然に授業を打ち切られたり、修了式や卒業式を行えなかった子どもたちです。
【前回の記事を読む】学習指導要領に焦点を当て、学校のいじめ・不登校対策の問題点を現場の視点から探る。