第一章 だれがいじめを解決するのか
―学習指導要領といじめ解決―
明治時代から受け継ぐ日本教育の伝統
いじめや暴力問題についての記載があるのが、学習指導要領の特別活動です。文科省は、特別活動について説明しています。「集団や社会の形成者としての見方・考え方」を働かせながら「様々な集団活動に自主的、実践的に取り組み、互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決する」ことを通して、資質・能力を育むことを目指す教育活動である。
(平成29年告示中学校学習指導要領解説より)
つまり子どもたちが成長し、大人社会で生きていくために必要な人間関係や集団生活について学び、育む場が特別活動です。
各教科には教科書がありますが、特別活動に教科書はありません。名称も「〇〇科」ではなく「活動」となっています。それは日本の教育の歴史と深い関係があります。
日本の近代教育は、明治5年の学制から本格的にスタートしました。各学校は子どもたちの自治育成として児童会や生徒会活動、集団の育成として運動会や修学旅行など、さらに地域文化の育成として伝統行事などを積極的に教育活動に取り入れてきました。そうした先人の知恵と努力が特別活動として引き継がれています。
特別活動は「学級活動」「生徒会活動」「行事活動」の3領域があり、とくに「学級活動」のみが年間35時間の授業時数が組まれています。学級活動は、子どもたちが安心安全に集団生活を送れるために、クラスの目標を決め、リーダー(学級委員や班長)や係や当番などを選出し、掃除や給食などの常時活動や運動会など行事活動の役割分担をするなどの幅広い活動を指します。
さらにそこで生じた人間関係などのトラブルや困りごとを生徒自身で解決することで、自主性や主体性などの育成、協力や思いやりといった道徳心の育成を図ります。
学級活動は指導要録に記載され、「学籍に関する記録」は20年間、「指導に関する記録」は5年間学校に保存されます。また、高校に送られる調査書(内申書)にも指導要録の写しが添付されます。
各教科は学年ごとに目標と内容が変わりますが、学級活動のみが1年生から3年生まで変わりません。