「勝手なことをさせるな! あいつも無鉄砲などという年齢ではないだろう。深瀬の足取りを追え。誰か連絡がつく者はいないのか?」

「はい」

笹井は、大勢が見守る中で手を上げる。

「僕、手が空いてたんで先に現場に行けと部長に言われて先行してて、現場で深瀬さんに会って経過を報告しました。この時間に捜査会議があるとは伝えたんですが、第一発見者に話を聞きに行くとのことで、こちらには来ないと。あと……自分で捜査するから近寄るなと」

その言葉に、五十名ほどいる捜査員達はざわついた。また単独捜査か、と木嶋が呻き声を漏らし、刑事部長に視線を送る。どうやら木嶋に弱いらしい、定年を待つばかりの部長は小さい声で言い訳した。

「いや……十燈荘と聞けば深瀬は絶対に一人で行くだろうから、相棒がいない笹井を補助につけるのが良いと思ってな……」

「仕方ない。お前、話を聞かせろ」

はい、と笹井は立ち上がる。

「笹井幸太、巡査長です。二ヶ月前、ここに配属となりました。よろしくお願いいたします」

「深瀬はどんな様子だった?」

「鑑識課、強行犯担当と色々話をしていました。進捗については、大中管理官にはご連絡があったものと考えておりますが……」