写っている人はみんな若い。父ちゃんがまだ四十代、あんちゃんは二十歳くらいだろう。姉ちゃんは十七歳で母親代わり、次男のあんちゃんはすでに勤め人になっていて背広姿で、ほかの兄姉は全員家から学校に通っていた。
駒子さんはまだ幼かった。兄姉が学校に行ってしまうと遊び相手もいなく、学校に行っていないのはあんちゃんと姉ちゃんだけだった。年の離れた駒子さんは「ココ」と呼ばれ、兄姉からめっぽうかわいがられて育った。
グループホームでヘルパーさんが起こしに来た。
「駒子さん、お風呂の時間ですよ。お風呂好きでしょう?」
「そうね、でも今日は入らなくてもいいかな」
「オムツし始めたのよね。いまお風呂に入っておかないと、赤くただれちゃうかもよ」
駒子さんはヘルパーさんの言葉への返事に窮した。
「あら! 汚れている! 駒子さん、うんちしたくなったら教えてね」
駒子さんはうつむいたまま心の中だけでつぶやいていた。急にお腹が痛くなり我慢できなくなった。でもそのとき、近くにヘルパーさんは誰もいなくてトイレに間に合わなかった。駒子さんだって粗相(そそう)をした自分が嫌になっていたのに。
できるなら、このままこっそり自分で始末したかったのだ。だがヘルパーさんは駒子さんをお風呂場に連れていき、裸にして立たせ、オムツを外し、駒子さんの体に容赦なくお湯のシャワーを浴びせた。