このことをアピールし、今すぐにでもぜひ中国の現地法人に出向させてほしいと申し出た。しかし、結局は年齢の壁で断られ、中国勤務も断念せざるを得なかった。
さらに、海外転職や海外で起業することも視野に入れ、業務経験を広げるために輸入品を取り扱っている子会社や旅行業務を行っている子会社への出向を希望したが、これも反応はなかった。
もう海外勤務はあきらめて、このままおとなしく六十歳の定年まで国内営業を全うして、退職金を満額もらうことを考えた。
ところが、ある日、ジャズ・ピアニスト、ビル・エヴァンスのCDを聴いていて、ふとあるタイトルが気になった。ミッシェル・ルグランが作曲した『What Are You Doing The Rest Of Your Life?』である。
下の子供も大学に通うようになり、親としての義務もほぼ果たした。ここでしくじったとしても人生たかが知れている。私の両親も至って元気で、当分心配なさそうである。会社はあてにできそうもないので、自力で海外に移住することを考え始めた。
しかし、何を準備すれば良いのか、全く思いつかない。とりあえず、コミュニケーションに必要なレベルの語学は身に付けておきたいし、できれば、アピール・ポイントの一つにしたい。ところが、現在の仕事の手を抜かずに勉強できる外国語は、せいぜい一か国語である。
このまま中国語を継続して勉強するか、それとも選択の幅が広がる英語を勉強するかしばらく迷っていたが、国内の外資系企業に転職することも頭の片隅にあったので、英語に集中することを決断した。
英語力をアピールするうえでTOEICが手っ取り早いので、TOEICの勉強を通して英語力をアップさせたいと思った。
平日は通勤時間、土日は図書館で勉強し、二〇〇七年九月、五十五歳の時、TOEICで目標を超える八百七十点を取ることができ、なんとか第一ステップはクリアできた。
欧米系の企業では難しいかもしれないが、シンガポール以外の東南アジアでは、少しは採用の武器にはなるであろう。
【前回の記事を読む】初めて見る光景であるのになぜか懐かしく感じたマレーシアの漁村。その後、私はある一冊の本に出合い…