第一章 夢はいつか海外で

魅惑のマジックバス

マジックバスは、途中、羊を追うジプシーの一行に出くわし、それを避けようとして、道路から飛び出してしまい、パキスタン軍に助けてもらうまで土手の斜面で身動きが取れなくなるというハプニングに見舞われながら南進した。

そのあと、イランに入り、砂漠地帯を昼夜走り続け、駱駝の隊商に出会ったり、アラビアンナイトに出てくるような美しいオアシスに立ち寄ったりしながら、ロンドンを目指した。

トルコのイスタンブールに着くと、バスごとフェリーに乗り、ボスポラス海峡を渡り、ヨーロッパに入る。

その後、ブルガリア、ユーゴスラビアの美しい田園地帯を走り抜け、やがてオーストリア、そしてドイツのアウトバーンに入り、その両側に広がる整然とした美しい街並みを見ながら快走を続ける。マジックバスは途中で乗客を降ろしながら、ドーバー海峡を渡り、終点のロンドンに到着した。

同じ地球の上にこれだけ多様な世界と文化が存在し、しかも、それらが一本の道でつながっている。

番組の最後に中上健次が「まさにタイムマシンに乗っているような気分であった」と言っていたが、私も同じ地球の上にこれだけ異なった世界が同時に存在していることにすっかり感動して、いつかいろいろな国に行きたいと思った。