「どういう……って、十燈荘内の連絡手段ですね。会社設立後に作りました」

「通常、メールやSNSで連絡がつくと思うのですが、わざわざこのような場所がある理由は?」

「まあ、回覧板みたいなものですよ。十燈荘エステートと契約している住民だけがログインできる仕組みになっています。」

吉田はそう説明する。

「藤市だと、回覧板を自分で隣の家に回しますが、ここは高級住宅街ですからね。隣の家も遠いし、そんなことをしたくない住人ばかりで。別荘にしていて普段はいない人も多いですし、連絡事項はこうやってインターネットに書いておいた方が良いってことで、うちがそういうシステムを開発したんです。

IDが住民それぞれに割り振られて、メッセージボックスで住民同士がやり取りできるようになっています。雑談できる掲示板もありますよ。今は今回の事件の話でもちきりですが……今は彼が管理してます」

そう言って社長が指差した机には、雰囲気の暗い青年が座っている。とはいえ、深瀬のクマの深さに比べたら、その青年はまだ健康的に見えた。深瀬は続けて訊ねる。

「先程、藤フラワーガーデンの堀田さんから聞いたのですが、この『じゅっとう通信』にアクセスできるのは、十燈荘の住人だけだとか」

「あ、はい。もちろんそうなってます。他の地域の人が見られたら困りますから」

「どういう管理になっているのですか?」

「いや難しいことは……説明してやって」

社長から指示を受けた部下は、バインダーを深瀬の手元に持ってきて仕組みを話し始めた。

 

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次回更新は10月17日(木)、21時の予定です。

 

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