アイアムハウス

歓迎ぶりに面食らいつつ、深瀬はそのまま奥に通され、一階の応接間のソファに腰を下ろした。

目の前に、眼鏡を掛けた中年の男が座る。

「いやあ、警察の方ですか。よく来てくださいました」

「どうも。静岡県警の刑事で、深瀬という者です」

「犯人は? 捕まりましたか?」

あまりパッとしない見た目の男は、食い気味にそう訊ねてくる。

「捜査中です。まずはお名前と年齢をお伺いしてよろしいでしょうか?」

「ああ、申し遅れました。私、十燈荘エステートの社長をしております、吉田静男です。今年で五十になります」

「ありがとうございます。最初に聞かせていただきたいのですが、昨夜から今朝まで、どこで何をしていましたか?」

「なるほど、アリバイの確認ですね」

吉田は頷いて、機嫌良く答えた。

「昨日の夜は、十時には仕事が終わって家に帰りました。うちは藤市内にあるので、三十分はかかりますね。で、家族と一緒にいましたが、身内の話はアリバイにならないんでしたっけ? 朝は八時出社なので、七時半には家を出ました。ここにいる社員も、全員八時には出社していましたよ」

「社員は全部で何名ですか?」

「私含め、五人います。名簿を用意しますね」

おい、と社長が声をかけ、先程の受付の女性が頷いた。

「ところで、この会社はいつできたんですか? 十六年前はなかったですよね。植木屋があったのは記憶していますが」