一方、東京都は2012年4月公表の「首都直下地震等による被害想定」(東京湾北部地震M7.3を想定)を10年ぶりに見直すこととし、2022年5月に「首都直下地震等による東京の被害想定」(東京都防災会議地震部会 部会長:平田 直 東京大学名誉教授)として公表した。

今回対象としたのは今後 30年以内の発生確率が70%と言われる「都心南部直下地震」(M7.3)。

(「東京湾北部地震」は1923年の大正関東地震の断層すべりによりすでに応力が解放された領域にあると推定されているとして、今回の対象から除外)  

最大(冬・夕、風速8m/s)

死者 6,148人(前回9,641人)

負傷者 93,435人(前回147,611人)

焼失家屋 112,232棟(前回188,076棟)

全壊家屋 82,199棟(前回116,224棟)

避難者 299万人(前回339万人)

帰宅困難者 453万人(前回517万人)

報告書では「この10年間の住宅の耐震化や不燃化、安心・安全な東京を実現するための取り組みが着実に進展する一方、高齢化の進行や単身世帯の増加などの変化があった。」「最新の科学的知見をもとに見直した結果、被害想定に大幅な改善が見られた」とした。

しかし、環七と環八の間に住んでいて、著しい高齢化の進行を目の当たりにする一方、周囲に耐震化や不燃化の工事はあまりなく、東日本大震災の教訓が生かされているようには思われないと言うのが筆者の実感である。

③ 日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震

日本海溝・千島海溝沿いの領域では、これまでプレート境界での地震、地殻内や沈み込むプレート内での地震等、M7 から8を超える巨大地震や地震の揺れに比べて大きな津波を発生させる“津波地震”と呼ばれる地震まで、多種多様な地震が発生しており、幾度となく大きな被害を及ぼしてきた。

中央防災会議では、東北地方太平洋沖地震の教訓を生かし、最大クラスの地震・津波を想定した検討を行うため、2015年2月に「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会」(座長:阿部勝征 東京大学名誉教授)を設置し、各種調査や科学的知見等を幅広く収集し、検討を進めた。

その結果の概要が2020年4月に公表され、「今回の最大クラスの津波断層モデルの検討は、過去6千年間における津波堆積物資料を基に推計することを基本としている。

その結果、推定された最大クラスの津波断層モデルの地震の規模は、日本海溝(三陸~日高沖)モデルがMw9.1、千島海溝(十勝~根室沖)モデルがMw9.3であった。

また、これらの資料から最大クラスの地震の発生確率を求めることは困難であるが、12 ~ 13世紀の津波と1611年の慶長三陸地震あるいは17世紀の津波との間隔が約3~4百年であり、17世紀の津波からの経過時間を考えると、いずれの領域においても、最大クラスの津波の発生が切迫している状況にあると考えられる」とした。

【前回の記事を読む】内閣府による南海トラフの被害想定:東海地方、冬の深夜、風速8m/sが最も被害が大きい。

次回更新は10月17日(火)、8時の予定です。

 

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