第4章
「地震予知」の希望!
「地殻変動の連続観測」が決め手に!
1.「 地殻変動監視システム」開発の目的は
「地震予知」ではない!
以下に紹介する「地殻変動監視システム」は20年程前に清水建設(株)が取得した特許である。
「地殻変動監視システム」の開発目的は、あくまでも「地震発生時や余効変動(注)時の現場周辺の地殻の変形状況の確認、さらには工事現場の法面(のりめん)等の衛星測位で動態観測する際の基準点の安定性確認に用いる」等とされており、地震の予知を目的とはしていない。
そこで、この「地殻変動監視システム」が前提として利用している、国土地理院の「電子基準点」(口絵・写真1)の「日々の座標値」がどのようにして入手されるのか?
先ずはその手段となる、GPSや電子基準点、GEONET等について由来を含めて概観し、さらに日々の座標値から基準点の変動、異常変動を「見える化」するための清水建設(株)の特許や様々な工夫について紹介したい。
その上で、地震予知や地殻変動の観測・解析に興味を持つ専門家で構成する「地殻変動監視チーム」(Monitoring Team of Crustal Movement MTCM)が清水建設(株)の特許に沿う形で独自でシステムを試作し、
過去20年余の間の我が国の大地震時の地殻変動を解析した結果をご紹介するとともに、「狭義の地震予知」、「地震予測」との違いをご紹介したい。
以降、様々な地殻変動解析結果(図、表)が出てくるが、この結果は「地殻変動監視チーム」が独自で試作したシステムによる解析結果である。
なお、地殻の変動を連続観測することによって、地震の前兆情報を得ようと言う研究は、明治の先人たちから始まって、1960年代の国による「地震予知研究計画」に引き継がれてきたことは1、2章で概観した。
その後は想定東海地震震源域や日本海溝、南海トラフ等に的を絞った、国の機関等による集中的な観測機器の設置と地殻の常時観測が行われているが、地域が限定されている上、地震予知への活用はかなり先のように思われる。
また、民間各社で国土地理院の電子基準点データを活用した地震の予知・予測も種々公表されているが、それぞれ分かり難さとその有用性に疑問があり、清水建設(株)のシステムに活路を見出したところである。