2.革命は突然始まった!

地震の予知を目指して、明治以来、我が国の地震研究の先人たちは100年以上にわたって「地殻変動」の観測に心血を注いできた。

そこでは、地殻の前後・左右、上下の変化を観測するためには傾斜計、水準測量器等の機器と何よりも沢山の人手が必要であった。

しかし、90年代の半ば以降の地殻変動の観測はそれまでとは桁違いの規模と精度に達した。

そして、米国で研究開発された人工衛星による位置測定システムは地殻変動の観測にとってまさに革命と言えるものであった。

GPS( Global Positioning System:衛星測位システム)は冷戦下の産物であった! 東西冷戦下の1960年代、米国では軍事目的として人工衛星を使って地球上の船舶や航空機の正確な位置を測定・把握する研究がスタートした。

1983年9月1日の旧ソ連による大韓航空機撃墜事件を契機に、当時の米国大統領ロナルド・レーガンはこの軍事衛星によるGPS(Global Positioning System)を世界の民間旅客機に無料で利用させるとの声明を出したのであった。

その後、米国では1989年に測位衛星の打ち上げを開始するとともに、民生運用に足る精度を満たした「初期運用宣言」が1993年に出された。(軍事運用可能な精度を満たした「完全運用宣言」は1995年)

『この動きに合わせて我が国では1987年から、先ず測量での実用化を目指しGPS受信機を導入し試験観測を重ねていたが、

1989年7月の伊豆半島東方沖海底火山噴火、1991年6月3日の雲仙普賢岳大火砕流の発生(死者・行方不明43名)では、緊急研究としてGPS連続観測点(電子基準点)を設置し、固定局での地殻変動の観測を開始したのであった。』(1)


(注:大規模な地震で、地震時だけでなくその後も地面がゆっくり動き続けること:国土地理院)

(1) 国土地理院測地観測センター「GEONET運用20年:課題と展望」国土地理院時報2017No129、104頁

【前回の記事を読む】地震予知の希望。地殻の日々の変化を観察すれば、地震の前兆を見つけることができる?

本連載は今回で最終回です。

 

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