第3章 
「地震予知」の絶望 ―後編―
またしても予知できなかった「3.11」

4.切迫する巨大地震・津波への対応?

③ 日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震

これを受けて2020年4月に設置された「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討ワーキンググループ」(主査:河田惠昭 関西大学 理事・特任教授)は最大クラス(M9クラス)の地震を想定し、震度分布・津波高等を推計。2022 年3月にこれを公表した。それによると、

地震

•北海道厚岸町付近で震度7 •北海道えりも岬から東側の沿岸部で震度6強

•青森県太平洋沿岸や岩手県南部の一部で震度6強

津波

•三陸沿岸では宮古市で約30m

•北海道えりも町沿岸で約28m

•岩手県中部以北では東日本大震災よりも大きい

被害想定

今回の被害想定で注目すべきは、防災対策を講じた場合の効果である。(➡)

「行政のみならず、地域、住民、企業等の全ての関係者が被害想定を自分ごととして冷静に受け止め、

①強い揺れや、弱くても長い揺れがあったら迅速かつ主体的に避難する。

②強い揺れに備えて建物の耐震診断・耐震補強を行うとともに、家具の固定を進める。

③初期消火に全力を挙げる。

等により、一人でも犠牲者を減らすことが求められる。」とした。

日本海溝地震

•死者(冬・深夜) 19.9千人(➡3万人) 

•低体温症要対処者(冬・深夜) 4.2万人(➡最小化) 

•全壊棟数(冬・夕方) 22万棟(➡21.9万棟)

•経済的被害額(冬・夕方) 約31兆円(➡27兆円)

千島海溝地震

•死者(冬・深夜)10万人(➡1.9万人)

•低体温症要対処者(冬・深夜)2.2万人(➡最小化)

•全壊棟数(冬・夕方)8.4万棟(➡8万棟)

•経済的被害額(冬・夕方)17兆円(➡13兆円)

驚異的な死者数の減少は、「冬・深夜であっても、避難意識を改善することによる避難の迅速化、津波避難ビル・タワー等の活用・整備、建物の耐震化率の向上による効果を推計した」とされる。

また、低体温症要対処者については、「既存施設の有効活用を図るとともに、避難所への二次避難路の整備や備蓄倉庫(防寒備品)整備などを行った場合の効果を推計した」という。

一にも二にも早期の避難と避難所の整備が決め手とされるが、北国の真冬の深夜に高齢者・要救助者の迅速な行動は本当に可能であろうか?

「突然の揺れ」を無くして、災害に官民協力して立ち向かう基盤を早急に作らなければならない。