第3章 
「地震予知」の絶望 ―後編―
またしても予知できなかった「3.11」

4.切迫する巨大地震・津波への対応?

中央防災会議では、東北地方太平洋沖地震の教訓を踏まえて、南海トラフ地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震について最大クラスの地震・津波を想定した防災対策の検討を進めてきた。

① 南海トラフ地震とその防災対策
避難対策

中央防災会議では2016年9月設置の「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応ワーキンググループ」(主査:平田直 東京大学地震研究所地震予知研究センター長・教授)の中で南海トラフ沿いで観測されうる可能性が高い異常現象のうち、

大規模地震につながるおそれがあるとした4つのケースについて、事前避難等防災対応の基本的な方向性を整理し2017年9月に公表した。

〔ケース1〕

南海トラフの東側の領域で大規模な地震(M8クラス)が発生した場合(いわゆる半割れのケース)。(1854年の安政東海地震、1944年の昭和東南海地震ではそれぞれ32時間後、2年後に西側の領域で大規模地震が発生)

〔ケース2〕

南海トラフ沿いでM7クラスの地震が発生した場合。(東北地方太平洋沖地震が発生した際には、その2日前にM7クラスの地震が発生していた。)

〔ケース3〕

南海トラフ沿いで、東北地方太平洋沖地震の際に観測されたようなゆっくりすべりや前震活動などの様々な現象が観測された場合。

〔ケース4〕

東海地震予知情報の判定基準とされるようなプレート境界面での前駆すべりやこれまで観測されたことがないような大きなゆっくりすべりが見られた場合。

このうちケース1、2についてはこれまでの国内外の実例に照らして地震発生の確率が高いとして、3日から1週間程度の事前の避難を呼びかけることとした。(避難の詳細については公表参照)

ケース3については、現在の科学的知見では短期的に大規模地震の発生につながると直ちに判断できないことから、防災対応に生かす段階には達していないとした。

なお、ケース4については、地震発生の可能性を評価して、行政機関に対して警戒態勢を取るように促した。