「南海トラフ地震臨時情報」

一方、気象庁は2019年5月31日から、「南海トラフ地震臨時情報」の提供を開始した。主な情報としては、

①「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」:監視領域内(想定震源域及び海溝軸外側50km程度)でM6.8以上の地震が発生し、「評価検討会」を開催する場合等

②「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」:想定震源域内のプレート境界でMw8.0以上の地震が発生したと評価した場合

③「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」:監視領域内でMw7.0以上の地震発生と評価した場合や想定震源域内のプレート境界で通常と異なるゆっくりすべりが発生したと評価した場合等である。

「臨時情報」が出た場合には避難等の準備を開始するとともに、地震発生後の避難では間に合わない場合には、要配慮者を考慮して1週間の事前避難を呼び掛けている。

被害想定

内閣府(防災担当)は2019年6月、「南海トラフ巨大地震の被害想定について」を公表した。(これは中央防災会議の 2012年8月公表の被害想定を最新のデータにより再計算したものである)

[前提]東海地方が大きく被災するケース(冬・深夜、風速8m/s)が最も被害が大きく、千葉県から鹿児島県の1都2府24県が被災地となる。(数値は最大で)死者:23万1千人(前回推計は32万3千人)負傷者:52万5千人自力脱出困難者:24万人津波被害に伴う要救助者:3.3万人全壊及び焼失棟数:151万5千棟と推計された。

一方、発災後ただちに全員避難、建物の耐震化率100%の対策で死者数をさらに14万人超減少可能と推計した。

南海トラフ地震発生時、死者、負傷者に家屋の下敷きやエレベーターに閉じ込められた自力脱出困難者を加えると一時に100万人超の要救護者が出る。しかも冬の深夜である。世界の災害史上でも例のない事態が起きる可能性がある。

政府としては減災の方策として、「半割れ」や前震とおぼしき地震を捉えて「次の大地震」に備えての避難行動を促している。

しかし、「半割れ地域」の人々はこれからも「突然の」大地震・津波に襲われ多くの犠牲者が出ることになってしまうし、プレート境界での単発の地震はいくらでもあるので、大規模な避難行動を促すにはさらなる追加情報が必要と思われる。

【前回の記事を読む】地震発生確率が高いと、人は安全確保の行動を起こすのであろうか。

次回更新は10月16日(月)、8時の予定です。

 

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