「保安官ですか……」
「そう、昔のテレビ番組にあったらしい西部劇で悪をやっつけるように、海の悪い奴をやっつける連邦保安官ワイアットアープなのよ」
「海上保安官……そのように呼ばれる男性だったの」
「そうよ。保安官なのよ」
しかし、裕子さんはよく知っているわ。
「裕子さんよくご存知ですね」
「松山市に海上保安庁の事務所があるわよ。たしか港の入り口ですけど、高校生のころ友達とよく港に散歩に行ったわ。それでよく覚えているの。名前は忘れているけど松山にもおおきな白いかっこいい船がありますよ。たぶん巡視船らしいわ」
「ふーん」
「ねえ、恵利子さんがよければわたしも協力するわよ。その男性に逢うことを目的に」
「ありがとう……でも不安なの」
「なにが?」
恵利子は口をつぐんだ。
将来を約束している彼がいるのに恋をする……そのことが不安であった。いけないことをしているのではないのか。きっとのめりこむのではないかと。
そして、もし、裕子さんにその男性を紹介したら、きっと裕子さんもまいってしまうような気がした。
【前回の記事を読む】「そう、わかりましたか? そのおおきな男性がとてもすてきに思えたの」また目が潤んでいるように見えて、はっきりとわかるような心のときめきを示していたのを感じていた。