第一章 ミス大洲の夏
大洲市商工企画課長として身を預かっている北島恵利子という女。ミスになってからなにかわからないが不安があると恵利子からきいている。ミスになれなかった女性や仲間から恵利子自身へ嫌がらせや家族への嫌がらせ、さらに発展して反社会勢力の関与の有無。いまのところはっきりとした具体性はない。
このような鋭い眼光を持つ男は一癖どころか二、三癖のあるとんでもない男と観察していた。この男と知りあいになっていればなにかと役に立つかも知れない。顔見知りになりたい。市役所商工企画課長というのも公的機関の役職であり信用してもらえるかも知れない。
その男を知るための接点をどうして持ってゆくか。あの男からすればそう簡単に話はできそうもないかも知れない。接点をどうするのか宮本は考えていた。恵利子との話では近くの島に来ているという。近くの島とはいったいどこの島なのか。ここから数時間かかる島なのか……この島でないのか。
しまなみ海道でのイベントは月曜日で終わる。最終日は午後四時で終わり帰宅準備に三十分程度かかる。そうすれば大洲市まで約三時間であるから午後六時三十分ころにはつく。もし仮にその男とコンタクトが取れ一時間から二時間話すことができれば二時間の遅れにすぎない。
恵利子と付添いの市役所の女性事務員は快く理解してくれるだろうか。木金は週末の代休を与えられて休みだが火と水は仕事である。事務員も同じだが火曜日に支障をきたすことがなければ話してみよう。宮本はその男の魅力をさぐってみたい衝動にかられていた。
ドックはいつまで入っているのか入ったばかりなのか。もう終盤にきているのか。とりあえずどこに入っているのか知ることが先決であった。ドック先をさがし、それからコンタクトを取ればいい。OKしてもらってから恵利子に話すことにするべきだろう。
タウン情報の電話を見れば造船所はわかる。場所がわかれば地元のスタッフにアクセスを教えてもらえば時間が計れる。昼休みに電話で造船所の所在を確認することを考えていた。あいにく他町村との調整があり時間が取れなかった。しかし、その男の実態を知るべくことはないかと気をもんでいた。
ふと気づいた。宇和島海上保安部に知りあいがいる。後日その知りあいから男の情報がきけるかも知れないと考えていた。