五 午後……十二時四十分 ドリームランド内社員食堂
「大変な事態になっちゃったね、君も混乱してるだろ?」
ドリームアイの管理責任者である宮内が、無料のお茶を取り出しながら言った。それを受け取ったのは滝口美香。観覧車の誘導担当係員だ。宮内は太り気味で、髪の毛があちこちに跳ねているため、滝口は、だらしのない人だな、という印象を持った。ドリームアイの精密さに比べて、このシステム担当者は諸々が緩いような気がしたのだ。
「そうなんです……。もうわけがわからなくて。まさかこんなことが現実に起こるなんて」
「僕もそうだよ。ドリームアイが勝手に止まるだけでもありえないのに、こんな大事故なんてさ。……でもゴンドラが落ちた時、周囲に人がいなかったのは奇跡だよ。百二十メートル上空から数百キロの物体が落ちたんだからね。大惨事になるところだった」
「もう大惨事ですよ……」
「ま、まあ……。でもまだ死者二名だし」
「二人だって、お亡くなりになってるんですよ! シルバーゴンドラが落ちて……宮内さん達の部門も大変じゃないですか」
「ああ、そりゃそうだけど。でも事故が起こってすぐ警察が大勢で乗り込んできたからね。
僕らはシステム運用部から完全に追い出されたよ。だから、やれることがないんだ。お手上げだよ」
「そうなんですか?」
「パスも取り上げられちゃってさあ。今やログインすらできないって徹底ぶりだ。おそらく疑われてるんだろうね」
「えっ……と」