第2章 ピアノの演奏はどうなったの

2 バッハ/グノーの『アヴェ・マリア』に挑戦

二十三小節の壁が越えられない

私もオクターブ下で、一緒にピアノを弾いて練習していました。指使いはもちろん、泰子さんの弾き方を見て、私は真似をしました。やはり弾けるとうれしそうです。しかし、だんだん始めに指を置くドの位置がわからなくなってきました。

黒鍵は二つのところと三つのところがありますが、それがわからないようで、ドではなくファから弾きだしてしまいます。でも、さすがピアニスト。そのままハ長調をヘ長調で弾いてしまうのです。

歌の伴奏をするとき、音が高かったりすると、「半音下げて」と言われることがあるので、移調して弾くことは慣れていたようでした。本当に、毎日のように練習をしていました。やはりピアノが好きなんですね。それでも二十三小節の壁が越えられませんでした。

そんな中、九月十日のちいたび会交流会で、二十三小節まで演奏する機会を与えてもらいました。何とか弾けたこの体験は、泰子さんにとってとても励みになりました。少し自信がついた泰子さんは、二十四小節目からの練習を始めましたが、なかなか難しくて苦戦していました。

泰子さんはいつも、まず一人で練習していました。そしてその後、私が一緒に弾いて音が取れるようにしました。このやり方が泰子さんにとっては、とてもうまくいくようでした。