Ⅱ 19ジャンルにも分類できる「感染小説」のテーマ

●根拠のない感染症の噂で拡がった、住民間の底知れぬ不安に呼応した行政の不条理な対応を題材にした小説

『臆病な都市』/砂川文次

公務員のKが、実体のないうわさ話から発展していく行政の不条理を経験していく姿を描く。

●感染の発生した場所、人、時を調べながら感染の経路をつきとめていく疫学の手法で感染を焙り出す対策を描いた小説

『エピデミック』/川端裕人

東京に近い町で発生した致死率の高い感染症に立ち向かう疫学の専門家たちの緊迫の10日間を描く。

●現役の医師や医療従事者が自分の体験をもとに医療の現場を描いた小説

『臨床の砦』/夏川草介

感染症指定病院に勤める敷島寛治は、新型コロナウイルス感染者が次々と運び込まれてくる最前線でその対策に奮闘する。

『機械仕掛けの太陽』/知念実希人

大学の付属病院に勤める医師・椎名、看護師として働く硲(はざま)、開業医の長峰の3人を中心にそれぞれの立場を通して新型コロナウイルスへの闘いに挑む。

●ウイルス感染症の研究者が、新興ウイルスの解明や悪性ウイルス対策に取り組む姿を描く

『パンデミック追跡者(第一巻、第二巻、第三巻)』/外山立人

主人公の大学教授が、鳥インフルエンザを中心とした新興感染症の解明に取り組む姿を描く。

●感染症パンデミックの中で医薬品や医療器材などが不足する状態に陥った場合それらの配分の順序をどうするかの問題を題材にした小説

『サリエルの命題』/楡 周平

流行しているウイルスに対応するワクチン、重症者用ベッド、エクモなどの機器が不足した場合の配分順位をどのように決めるのか。