Ⅱ 19ジャンルにも分類できる「感染小説」のテーマ
●日本の歴史の中で流行した天然痘、コレラ、スペイン風邪による感染症を題材とした小説
『火定』/澤田瞳子
735年から737年にかけて100万人を超える人が死亡するという天然痘の災害が日本を襲った。この大災害に立ち向かい生き抜いていく奈良時代の人々の姿を描く。
『安政くだ狐・首斬り浅右衛門人情控』/千野隆司
安政5年。白い水を吐き3日の内に死に至るという疫病(コロリ)が蔓延し大混乱に陥った江戸が舞台となる。
『破船』/吉村 昭
漂着した船の積み荷を生活の糧にする風習のある漁村に村の存続に関わる災厄が襲う。
『マスク』(短編)/菊池 寛
医者から心臓が弱いことを告げられた主人公は、流行性感冒(スペイン風邪)に恐れを感じマスクの着用に特別の思いを持つ。
『簡単な死去』(短編)/菊池 寛
主人公の勤める新聞社で同僚が、スペイン風邪で死亡した。お通夜に出席する社員がいなかったのでクジで出席者を決めることになった。
『流行感冒』(短編)/志賀直哉
主人公の住む街にも流行性感冒(スペイン風邪)が流行った。感染することを恐れた主人公は、家族に外出することを禁じた。