Ⅲ 「感染小説」、その概要とあらすじ、私的感想
『復活の日』/小松左京/角川文庫(1975年10月発行)
【作品概要】
生物化学兵器として開発された猛毒のウイルスの拡散でほとんどの脊椎動物が死滅する中、南極だけはその災禍を免れる。次いで、からくも生き残った米ソの相互核攻撃プログラムの起動による2度目の人類死滅の危機を防ごうとする南極人たち。防ぎ得なかった核の相互報復から南極は免れ、ウイルスも死滅。その先に訪れるのは人類復活の未来か。
本書は、「プロローグ(7~29頁)」「第一部 災厄の日(31~349頁)」「第二部 復活の日(351~426頁)」「エピローグ(427~437頁)」という構成になっている。
【あらすじ】
「プロローグ」
原子力潜水艦ネーレイド号の艦長のマクラウド大佐が、日本人の吉住を呼んでテレビ受像器に映る陸地を見せた。海上のかなたに人口1200万人の國際都市・大東京の無残な骸があった。東海道線の赤錆びたレールの上に数台の電車がひっくり返っていた。これは一体何を語っているのか。これは人類絶滅の災厄の暗示なのか。
「第一部 災厄の日」
第一章 冬
英国コンウオールの農家に舞台は移る。生物兵器の開発にたずさわるカールス教授が、得体のしれない男たちに小さな瓶に入ったアンプルを見せて彼らと取引をはじめる。それは強烈な毒性を持った生物兵器・MM-88だった。
男たちは旧式の双発小型機にこの奇妙な瓶を積み込みアルプス越えの航路をとり近東の地に向かった。フランスからアルプスを抜けイタリアに向かう夜行列車の運転手助手が、トリノの手前で、北方の山中に何かが爆発する明るい光を見たので警察に通報した。調査が行われ、木製の飛行機が墜落していたことが分かった。遭難機の傍らに黒焦げの死体が3つ発見された。付近にはガラスの破片が散乱していた。
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