Ⅲ 「感染小説」、その概要とあらすじ、私的感想
『復活の日』/小松左京/角川文庫(1975年10月発行)
【あらすじ】
第二章 春
イタリアの高速道路で有名な若手俳優が自動車事故を起こした。事故の原因は謎であったが、運転者は事故の起こる前に死亡していたことが分かった。同乗していたが助かったコールガールが、なぜか心臓麻痺で急死した。
それ以後、アルプス山中で羊や牛の間に原因不明の死が蔓延したり、アメリカのカンザスシティで七面鳥が大量に死亡したり、チベット風邪が発生したり世界的な規模の災厄が次々と出現する。人類の滅亡を暗示して不気味である。
第三章 初夏
この章では、アメリカやイギリスが、国防の戦略として生物兵器をどのように扱ってきたのか、その現状はどうなっているのかを114頁を割いて描いている
(東西間の激しい冷戦時代に書かれたとはいえ、その戦慄するような内容に愕然とさせられる。また、生物兵器に使われる細菌・ウイルスなどに関する著者の莫大な知識と知見の積み重ねに驚かされる)。
その年の6月のはじめ、東京銀座の歩道に一人の男性が倒れていた。その近くに女性の死体があった。その日以来、行倒れ死体が次々と増えていった。ワクチン治療ができず、6月末には、全国で8千万人が死んでいた。
南極の昭和基地で、辰野、吉住両隊員は、世界の各地のアマチュア無線と情報収集のため交信をする。しかし、ウガンダでは人間も野生動物も全滅、リオデジャネイロは死骸の山など惨憺たる現状を知ることになる。
各地との交信も全面的に途絶えていく。各国の探検隊が本国との連絡が完全に途絶えたことを受けて、アメリカ探検隊のコンウエイ提督の呼びかけで最高会議が結成された。
第四章 夏
8月の第2週、ヘルシンキ大学スミノフ教授のラジオ放送による最後の講義が流れた。絶えることのない愚かな人類の歴史と文化を語る内容であった。
「第二部 復活の日」
南極の最高会議で住吉隊員が、アラスカで地殻異常が観測され1年以内に、マグニチュード8以上の地震が予想されると報告した。
元米国防省のカータ少佐は、アラスカのレーダー基地が地震によって壊滅すれば、自動報復装置でソ連に核ミサイルが発射されると報告した。
元ソ連国防省のネフスキー大尉が、ソ連にも同様のシステムがあり何発かは南極に向いていると報告した。ワシントンとモスクワにあるこれらのシステムを破壊するために、吉住、カータ、ネフスキー、マリウス隊員たちが乗船した2隻の原子力潜水艦が出航していった。
「エピローグ 復活の日」
米ソで発射された核ミサイルとワシントンを襲った核ミサイルは、中性子爆弾だった。中性子により人体を侵さない変体を多量に作り出し有効なワクチンが完成した。
地球に厄災が襲ってから9年目のこと。南極から手作りの船で17名の人間が南米のホーン岬に上陸した。その年の12月に子供や女性をまじえた300人が上陸してきた。南米の南端に町ができた。人類復活の兆しが見えてきた。