第4章 アルミ鋳物の創業
松葉工業の創業期
数日経って、1千2百万円で社内稟議は通ったと返事が来た。
松葉は、お礼を言って、社長決裁をもらうため、すぐ契約書を送ってもらうようにお願いした。
そして納期を聞いた。90日掛かるとのことだった。それなら、新しく購入する10トンクレーンの納期と同じだから差支えないと思って、了解した。
社長に説明をひと通りして、社内の受け入れ準備に取り掛かることにした。ちょうど、90日目約束の日に、設備は納入された。10トンクレーンの設置は既に終わっていた。設備は、全て据置タイプなので、すぐ試運転が開始された。
製品のでき映えは申し分なかった。1サイクル90分を少々超えていたが、松葉は引渡書にサインした。松葉はその夜、設備メーカーの営業担当者と据付工事責任者を料亭に招いて、慰労をすることにした。
松葉はその席で、この種の設備の販売状況を聞いてみた。既に45件の契約が終わったという。鋳物業界での反響は大きいという。
鋳物製品メーカーの評価はたいへん高いそうだ。それを聞いて松葉は、意を強くした。翌日、営業社員を集めて社内説明会を開いた。
みんな「この鋳肌ならどこに出しても恥ずかしくない」「自信を持って売れる」と口々に言う。松葉は、たいへん心強く思った。
3年もしないうちに、この設備では生産が間に合わないほどの注文が舞い込んだ。営業社員の不満が鬱積していると営業課長から耳打ちされた。