気がついたらこんなことに

私には、農業がなぜ嫌われるのか、その理由がよくわかる。彼と知り合う前の自分がそうであったからだ。

まず、休日がないということである。働いても働かなくても、とにかく畑に出ていれば仕事をしていることになる。ひと目で百姓とわかる格好も嫌だった。

「どうせ汚れるから」といって、たいていは着るものに気を使わない。女性だったら綺麗でいたいはず。そんなこんなで、農業に対するマイナスイメージはどんどん出てくる。

「田舎の香水」ってわかるだろうか? 今では死語となっているのだろうが、とても侮辱していると思う。

子供の頃、遠足に行って、プーンと臭ってくると、友だちは顔をしかめて言う。「田舎の香水だ、くさ~い!」と鼻をつまむ。なんとも言えない気持ちでそれを聞いたものだった。水洗トイレの家なんて数えるほどしかなかったのだ。

働いているわりには、収入が少ないというのもおかしいと思った。だから、若者は町に働きに出る。そうなると、たまの休みにも農作業をしなければならない。

それから、農業に対するとても嫌な誤解がある。「おまえは勉強ができないから農業でもやれ」といった考え方だ。とんでもない話だ。

たしかに昔はそうだったかもしれない。しかし、現在は農業で食べていこうとすると、生半可な気持ちではやっていかれない。労力はもちろんのこと、作物に対する徹底的な研究と試作が必要だ。

それに加えて、経営能力も不可欠となってきた。農業従事者は経営者にならなくてはいけないのだ。こうなると、昔のように能がないからの農業でもやれ、というわけにはいかない。農業こそ勉強が必要な職業だと思う。