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おばあちゃんはどう思っているのだろう。
藤井奈々子さんの話す日向子さんとテツロウ君の出会いに、そんな疑問を持ってしまったのだ。
私はつい、声に出しておばあちゃんに話しかけてしまった。
「おばあちゃん、よかったね。日向子さん」
おばあちゃんの目は優しかった。私は少なくともそういう目に見えた。
「うん、そうね」
おばあちゃんがそれだけ静かに返事をしてくれた。
おばあちゃんの目は、藤井奈々子さんが初めて訪れたときに比べて奥の方に凹んでしまったように見える。
話を聞くのはつらいことでもある。だから体も疲労しちゃっているのかも。
そこまで考えたら、私の発言が良かったのかどうかも分からなくなった。
優しい目だったのか悲しい目だったのか。
(おばあちゃん、ごめんね)
私はおばあちゃんの手を握りなおす。
おばあちゃんはこっちを向いて、小さく頷いてくれた。
その後に藤井奈々子さんの方を見る目は、皴の重なる瞼の奥で揺らいでいるようにも見えた
【前回の記事を読む】「私はあの時、病院で死んでしまったのだ。」人々には私の姿が見えないし、喋っても聞こえない。そのはずだったのに…!?
次回更新は9月11日(水)、11時の予定です。