ナオミは白人の子とも黒人の子とも見た目は違う。でも一緒になって勉強したり遊んだりすれば、とても賑やかで楽しいだろ?」
「うん、いろんなこがいて、とてもたのしいよ」
「そう、それがこの国のいいところなんだ。みんな先祖の国の旗は違うけど、今は同じアメリカの旗のある教室で友達になっている。すばらしいと思わない?」
分かるような分からないような顔をして、ナオミが尋ねた。
「すばらしいの? みんなおんなじだったら、どうしてわたしはちがうのってかんがえなくてすむのに」
「違っているからすばらしいんだと、パパは思うな。少しずつ違う色や模様があるから、遠くから見ると綺麗な絵になるんだと思う。
どうして私は違うのって今度思うことがあったら、綺麗な模様を作れるからだよって考えてごらん。そして雲の上から自分を見る気持ちになってみるといいと思うよ」
「わかった、こんどはそうしてみる」
三年生の時のケビンとのやりとりが甦った。そうか、からすたろうがカラスの鳴き声をまねした時、それまで近くにいるたろうしか知らなくて、無口で変わった子としか思わなかった友達は、たろうが毎日歩いて学校に通う遠くの山が見えたんだ。
自分たちがいて、頑張り屋のたろうがいる大きな絵が見えたんだ。そして、たろうもみんなと同じすばらしい友達なんだと気づいたんだ。
ナオミは、たろうの話がどうしてこんなに胸に迫ってくるのか、そのわけが分かった気がした。たろうは私、私はたろうなんだ。
【前回の記事を読む】【先行配信】マンザナー強制収容所で二年十ヶ月を過ごした祖父母と父母。ある日志願兵募集があり、二世の若者は自ら戦うことを選んだ
先行配信はここまでとなります。次回連載予定は未定です。