散策に夢中になっているうちに、すっかり迷子になっていたことに。
私の頭の中は真っ白になった。
もしこのまま帰り道が分からなくなったら? たった一人で異国の地に取り残されるの? 私はどうすれば良かったの…?
祖母とIさんに単独行動を宣言しておきながら、あるまじき失敗だった。
まさかここで「本当の一人ぼっち」を味わうことになるとは想像もしていなかった。
中学校でもずっと孤立していた。だがそれとはまた違ったニュアンスだ。
もしかしたら他の参加者さんに会えるかもしれないが、その保証はどこにもない。土地勘は全くもって皆無で、周囲は当然ながら異国の人だらけだ。
学校ならば家に帰るまでの道は記憶喪失にならない限り分かるが、ここではそれすらも分からないのだ。
帰り道の分からない恐ろしさ。完全に孤立したあの時の感覚。
「一人にさせてほしい」と言ったこと自体にはそれほど後悔していないが、不安が頭を占めていたことには間違いない。
だがこのままでは埒が開かない。私は、恐る恐る旅行前に丸覚えしてきたイタリア語で道を聞くことを決断した。
【前回の記事を読む】歴史的な建築もラグジュアリーブランドも、当時の未熟な私にとっては目をひかない、ただの風景だった
次回更新は9月2日(月)、11時の予定です。