コモは今まで見た都市ほど目ぼしい観光資源はないが、代わりに小さくとも洗練された景観が魅力的だった。コモは高級住宅が密集する街で、日本で言えば軽井沢や日光に近いと言ったところだろうか。
湖で観光クルーズ船に乗り、私たちはコモの真髄を見ることになる。
湖周辺は富豪たちが住むカラフルな別荘が立ち並び、その中の一つにイタリア元首相・ムッソリーニの孫が住んでいるというものもあるとの説明を受けた。
これほどカラフルで愛らしい別荘が点在する夢のような場所があるなんて。コモは他の主要都市と比較して物足りなかったという人も中にはいたかもしれない。
しかし私は、ミラノに戻るしばらくの間、デジカメで撮影した写真を見返しながらコモは何て洗練されて可愛い街なのだろうと余韻に浸っていた。
ミラノに戻った後の昼食は、アーケードを抜けた先にある日本語メニューを提供しているトラットリアで食べた。私はマルゲリータで腹を満たし、その後の自由行動では祖母とIさんに「時々合流するかもしれないけど、自由にさせてほしい」と言った。
この時、前日の後悔がまだ胸に残っていたからこそ、最後の時間は自分の力で異国の地を歩いてみたかっったのだ。二人は心配しながらも了承してくれた。
それから私は、時折同じ参加者と遭遇しながらミラノの街をじっくり歩いた。
私が散策した周辺は鉄筋コンクリート製の建物はそれほどなく、アーケードにあるものよりもリーゾナブルで親しみが沸きやすいブティックが多かった。
その中の一つに他の参加者さんと入店した時、そこに当時の「なりたかった私」を強烈に感じた。
カーキ色のミニスカート、白を基調にピンクがかった赤に青のトレーナーと、実はこういう服が着たかったと思わせるような品が多くディスプレイされていた。値段は一〇〇ユーロ前後で既にその額のお小遣いは手元になかったが、これは良い経験になった。
そのブランドの名前はすっかり忘れてしまったが、偶然この店に入ったことで、高校生になってからの洋服選びも良い意味で変わった。
そんな風に街中を探索している時、私は気付いたことがあった。