第一章    今生の別れ

二〇〇一年十二月二十四日 

僕はちょっぴりほっとした。誕生日のプレゼントは、父と母から恐竜の図鑑で、祖母のふくちゃん(祖母が自分で決めた呼び名)からは三輪車だ。

どれも飛び上がるほど嬉しかったが、サンタさんからのクリスマスプレゼントは、三ヶ月も前から僕が楽しみにしていたプレゼントだった。

明日の朝には、母が作った大きな靴下の中にサンタさんからのプレゼントが入っている。そう考えただけで、ワクワクした。

「よし、飾り付けも終わったし、次は何をしようか」

父が言った時、玄関のチャイムが鳴った。

「誰かな?」

父が玄関のドアを開けると、見慣れた二人が立っていた。同じ保育園に通っている可憐(かれん)ちゃんとお母さんだ。近所に住んでいるので、父も何度か顔を合わせている。

「こんにちは。突然すみません。可憐がどうしても光くんに、お誕生日のプレゼントを渡したいと言って」

可憐ちゃんママは、後ろで恥ずかしそうにしている可憐ちゃんの体を前に押しだした。

「光くん、お誕生日おめでとう」

そう言って、可憐ちゃんはリボンの付いた大きな袋を僕に差し出す。保育園では一緒に遊んだり手をつないだりすることもあるのに、外で会うと急に恥ずかしくなる。

「ありがとう」

僕は俯(うつむ)きながら、受け取った。

「なんだ光、照れてるのか」

父が冷やかすと、「可憐も恥ずかしいみたい」と、可憐ちゃんママもクスクスと笑った。

「光くん、また明日ね」

僕はコクンと頷いた。

「わざわざ、ありがとうございました」

父が言うと、可憐ちゃんママは、可憐ちゃんと同じ丸い顔で満面に笑みを浮かべ頭を下げた。