忍び寄る病魔

手術後三カ月が経過し、検査と術後の病理結果を聞くため、病院に向かっていた。

「手術は成功したと執刀医も言ってたし、今はどこも痛くないんでしょ?」と私から言い出した。千恵は、

「痛いところはないよ、何もなければいいんだけど……」

検査が終わり、診察室に呼ばれた。七カ月前、あの病院で、がんを宣告されたことが脳裏に蘇ってきた。

「大丈夫、心配ないって」

と言ったものの、心臓の鼓動が速くなっているのを感じた。

担当医師から出た言葉は、

「リンパへの転移が見つかりました」

だった。再発した。五年生存率は十パーセントとのことだ。抗がん剤の投与が始まる。千恵は平静を装っているように見えたが、私は涙を抑えることができなかった。私より千恵の方が何倍もショックを受けていたはずだ。

帰宅後、二人ともしばらく無言だった。がんを完全に切り取ったことで、あの辛かった三カ月間を二度と経験しなくて済む、これからは毎日安心して過ごすことができると信じて今まで頑張ってきた。

これからは、死を覚悟して生きていくしかないのか? いつ、死はやってくるのか? 自分にそう言い聞かせたものの、

「十人に一人は、五年以上生きていられるのだから、その一人になればいい。結婚する前に患った病気だって、奇跡的な確率で今こうして生き延びることができているのだから、今度は二人、力を合わせて、立ち向かっていけばいい。頑張るしかないじゃないか」

と言って、自分を鼓舞した。