その日の夜、遅い時間帯での夕食となった。千恵は、ご飯をよそった茶碗を床に落としてしまった。

「あっ、ごめんなさい」

動揺している姿が見て取れた。ほとんど会話することなく、夕食の時間は過ぎた。

半年前、娘の中学受験を考慮し、手術をする日を三カ月後に決めたあの時の判断は正しかったのか? 中学受験がなければ、もっと早く手術ができる日はあった。その時に手術していたら、結果は違っていたのではないのか? 

後悔しても仕方ないことは分かっていたが、ベストな判断だったのか? 娘の中学受験などよりも、千恵の手術の日程を尊重していれば、転移はなかったのではないか? 考えても、どうしようもないことだと分かっていても、考えずにはいられなかった。

ウィッグを、一緒に買いに行くことにした。

結婚後、千恵の頭髪をジロジロ見ることはなく、よくよく見ると他の人より少し太めだと改めて感じた。

「どれにしようかな?」

「これがいいかな?」

「少し、高めでもいいでしょ、一生使えそうだから……」

「ウィッグに合う帽子も買っていいでしょ」

と楽しそうに話をしているように見えた。