第3章 貸し渋り

手形割引拒否

玄関に一番近いところに車を止めた松葉は、玄関へ急いだ。金切り音を立てながら上がっている玄関のシャッターを潜ると、朝礼を終えたばかりの行員が一斉に松葉の方に目を向けた。

松葉はそれを無視するかのように、融資担当のカウンターのところに足早に行った。融資担当の古賀はすぐに立ち上がり、支店長応接室に案内した。

支店長応接室は、支店長席の後ろにあった。支店長は、松葉が来たのに気がつくや、立ち上がり笑顔で挨拶した。そして、どうぞ、と言って応接室のドアを開けた。

「朝早くからすみません。どうぞお掛け下さい」

支店長に続いて融資担当の古賀も入ってきた。

「社長さん、困りました。本部が強行でして、やっと割引を実行するところまでは説得できたのですが、今度までだと言うのです」

「今度まで? 毎月お願いしてきたことなのですよ。今度までだったらしないのと一緒ではないですか」

何をふざけたことを言っているのだ! 子供騙しではあるまいし。松葉は、言葉に出して、怒鳴りたかった。しかし、ここで喧嘩をしてはこちらの負けだ、と言葉を呑み込んだ。

「社長さん、おっしゃっていることはよく分かります。我々も現場としてたいへん困っています。社長さん、如何でしょう? 次回から、他の金融機関で割引されたら」