支店長の発言に松葉は困惑した。支店長も、困った顔をして言っている。この支店長は、松葉工業の今後を考えて言ってくれているのか、それともシナリオの一部を実行し始めたのか?

支店長の困った顔は、単なる演技ではないのか、松葉はいろいろと考えを巡らせた。

「支店長、今更どこの銀行にお願いするのですか。また、そんなことできますか。都城市に支店を持っている銀行はみんな、割引だけでもお願いします、と何度も来られました。それをお断りしてきているのですよ。今更言えませんよ」

松葉は、支店長の目を見ながらはっきりした口調で言った。

「そうですね。困りましたね……。仕方がありません。他の金融機関では割引はできないと言われたと本部に伝え、何とか割引するように説得してみましょう。そこで、相談ですけど、預金をお使いになって割引額を減らしてもらう訳にはいかないでしょうか」

「預金って、どこの預金ですか」

「社長さん個人の預金でも結構です。社長さんの誠意の表れだと伝えます」

「どれぐらいの金額ですか」

「社長さんにお任せします」