【前回の記事を読む】債権者の視線にも臆さず、シャッターを開けた社長の覚悟――「事業を継続します、という意思表示なのだよ」

第1章 債権者集会

そんなこと、どうでもよい

「その理由は、事ここに及んだ原因がはっきりしているからということです。皆さんもご承知の通り、関東工場の設備メーカーの倒産による操業遅延、そして遅れて動き出した設備に不具合が発生し計画通りの生産ができなかったことに対し、銀行が過剰に反応し、契約通りの融資を中止しました。

バブルが弾けたからといって売上が落ちた訳ではない、バブルに浮かれ、株や不動産投資などに資金が流れた訳でもない、既に銀行が差し向けた監査法人の調査で明らかで、調査書をもって説明すれば何らの問題もない。私どもの事業そのものにも何ら問題はありません。皆さん、安心して今まで通りの仕事を続けて下さい。

皆さんの前で宣言します。松葉工業は必ず復活します。皆さんがいるから復活します。

一致団結して乗り切っていきましょう」

松葉は、淀みなく訴えるようにして話した。

松葉の挨拶が終わると、竹之下が前に出てきてピョコンと頭を下げた。

「先ほどシャッターを閉めろと言いましたが、今の社長の話を聞いてよく分かりました。社長の松葉工業を再生させるのだという決意がひしひしと伝わってきました。

みんな頑張ろう。社長についていけば間違いがない。いいかみんな、わが社は潰れたのではない、破産した訳でもない。これから頑張って今まで以上の会社にしていきましょう。再生なった暁には、私は会社を辞めます。覚悟して頑張ります」

熱血漢の竹之下が、最後はいつものように熱っぽく語った。

朝礼が終わると、社長室で仙田が竹之下に詰問するようにして言った。