「諸外国に比べ、日本の文化として人を応援することに対する慣れがないので、試合会場で声を出すのも恥ずかしくて声援を送れない人も多くいる。僕はそこを取っ払いたいと思っていたので、応援する文化をつくりたかったし、子どもたちに本物を見せたかった。
言ってしまえば、僕らはフェンシングの普及活動のために小学校訪問をしたわけではないんです。そもそも県や都に対して『フェンシングの普及活動をさせて下さい』と言っても『ご自由にどうぞ。でも予算はそちらでお願いします』となりますよね。
そうではなく、僕たちは『フェンシングの本物を見せる喜び、応援の喜びを伝えさせて下さい』と。極論を言えば別に他の競技でもいいんです。だけど僕たちはフェンシングの出身者だから、フェンシングだったらできます。
そういう見せ方にすれば県や都と一緒に取り組む事業になるし、子どもたちもどっちが勝つかを予想して、精いっぱい応援する。勝った、負けた、という結果を選手と一緒に分かち合って、負けた子たちも『悔しいけれど、勝った相手を称え合おう』と伝える。
子どもたちは応援しながら熱狂するし、その熱気は選手にも伝わる。素晴らしい企画だと思うし、今は会長を退きましたけど、1つのパッケージとしてこれからも続いて行くものだと思いますね」
本来ならば2020年に開催されるはずだった東京五輪は、新型コロナウイルスの世界的大流行に伴い、前代未聞の一年延期を余儀なくされた。
当初の予定通りに行われていれば会長として臨むはずだった五輪が2021年になったため、そのまま会長としての任期も延長するのではないかという声も少なくない中、太田は就任当初のプラン通り、2021年6月に二期四年の任期を全うし、会長を退任した。
【前回の記事を読む】引退から2年後、31歳という若さで日本フェンシング協会会長に就任した太田
次回更新は8月5日(月)、21時の予定です。