でも、これからは行政にも民間の機関にも、相談に行ける自分になりたい。
私は三十五歳だ。まだ三十五、もう三十五、どちらかわからないが、生まれて初めて人の気持ちに報いたいと思った。
もしも許されるならば、木村のおばあちゃんの介護を手伝わせてほしいと思った。ご家族が大変お怒りなので、叶わないかもしれないが。生き直そう、ちゃんとでなくてもいい。
誰か一人でも、私の存在で笑顔になってくれたらいい。
人工心肺装置が外された。まだ不安の気持ちのほうが強いが、悪い仲間に関わることはしないと、保護観察官の先生に固く約束した。
感染症から生還しても、私は後遺症で苦しんだ。一か月近く人工心肺装置で呼吸していた体は、自力呼吸にしばしば悲鳴をあげて、少し動いただけでも息切れがした。筋肉も体力も落ちて、リハビリに多くの時間を費やした。
立っているとフラフラして、数歩歩くのがやっとだった。若いからと体力に自信を持っていても、健康は簡単に崩れることを知った。
なかなか検査結果が陰性にならなかった。
【前回の記事を読む】年寄りの寂しさにつけ入るのは、とてもたやすい作業だった。彼らが喜びそうなことを言うと、面白いように高齢者は私に騙された
泥の中で咲け[文庫改訂版]はこれで最終回となります。
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