彼の半身に映像がかぶった。流れ出したのは、もう何十回も観ている有名な日本アニメだった。
小学生の主人公が、ひょんな出来事をきっかけに異世界に迷いこむ。奇怪な湯屋に身をよせながら、人ならぬものたちを救い、自身も成長していくという物語だった。
大人から子供まで楽しめて海外版も作られるほど人気だったが、都市伝説のような噂を聞いたことがある。
昔の湯屋は銭湯ではなく風俗店だったので、このアニメは実は花街の物語だというのだ。そう思うとより興味深かった。
もう少し観ていたかったが、胸に触れてきた手に内容がになっていく。
いつの間にか映像に背を向けて、シュウジさんの細い膝にまたがっていた。彼を背もたれに押し倒し、シャツに手を差し入れる。
首元に口づけながら胸のとがりをいじると、わずかに声を漏らした。指を動かすたびに黄緑色の色彩が浮かぶ。
次第に、ホームシアターが壁を震わせるほど大音量になっていることも気にならなくなっていった。二人分の声が外に聞こえないようにしているのかもしれないが、逆に近所迷惑ではないだろうか。
けど、ここは自分の部屋じゃないもんな、と割り切る。ソファで裸になり、野良犬のように隣の部屋にもつれこんだ。
【前回の記事を読む】自由とはある種の不自由だった。一から十まですべて自分でしなくてはいけない上に、成功するとはかぎらない