第3章 鍼灸師が扱う代表的疾患改善の施術法

不妊治療

・施術手順

女性の体力・免疫力向上のために、扁桃七穴への5分間置鍼の後、三陰交と陰陵泉と内関の刺鍼と施灸をします。

足三里と復溜と石門と次髎の温灸により、子宮と卵巣の冷えをとります。

瘀血(おけつ)があれば、瘀血(おけつ)処置を、捻れがある方は帯脈処置と下垂処置をします。

(注意点)

肩凝りを訴える女性患者さんへの、肩井刺鍼は、貧血を起こしやすいので妊娠の兆候のある場合には、注意すべきです。骨盤内鬱血改善のために陰陵泉置鍼での肩井刺鍼は有効ですが、三陰交置鍼での肩井刺鍼は、禁忌とするのが無難です。

「宋の太子園を出でて妊婦に逢う……」の古典にでてくる早産・流産の術式である、三陰交・肩井刺鍼は、子宮内膜の貧血と振動を示唆したものです。

又、捻れ取りに帯脈処置は必須ですが、加えて内・外居髎穴への刺鍼を併用すると効果的です。

・診断法

新経絡治療での経絡特徴としては、腎経や胃経の虚証が多くみられます。良導絡測定値では、肺経や胃経や腎経や肝経の左右差が見られます。

・ 男性側の機能改善治療の目的は、精巣に関与する肝経の強化と、腎経と胃経の補法です。現代人特に青年層には、パソコン・スマホ等、電磁波の影響や視神経疲労による、肝経支配領域臓器の機能低下が多く見られるようになり、これが精力減退ないしは脆弱化の原因になっていると私は考えています。

新経絡治療での経絡特徴としては、肝経特に左肝経に虚証が多くみられます。

良導絡測定値では、三焦経の左右差や、肝経の通電量増大、腎経の通電量低下があります。

強酸性の膣内をかいくぐって卵管を遡上する精子の活力向上のためには、所謂先天の気を支配し関与している腎経を強化する必要があります。

湧泉と復溜と三陰交の施灸をします。勿論、後天の気向上も必要ですから、足三里と胃の六つ灸もします。

肝経強化のために、瘀血(おけつ)・肝実処置をします(左肝経又は左肺経が虚証である場合には肝実処置だけでも有効です)。

視神経の疲労や、交感神経緊張亢進の改善処置としての、攅竹(さんちく)と魚腰(ぎょよう)への単刺をします。

肝門脈の鬱血改善処置も必要な治療です。