第一章 嫁姑奮戦記

姑はよく鼾をかく。その際、時々呼吸が止まることに気がついた。最初は驚いてゆり起こしたりしたが、先生や看護婦さんにお尋ねすると、老人に多い症状なのでそう気にすることはないと言われる。

今までは他のことにかまけて気がつかなかったが、注意して様子を見ているとかなり頻繁だ。苦しくはないのだろうか。

夜はすぐ起きて寝るのは明け方というパターンで、付き合う私は睡眠不足の連続で、神経が高ぶり眠気さえ感じずイライラがつのる。

そんな時のこと、たまたま姑の頭の上に干してあったタオルがひらっと寝ている姑の顔に落ちた。大きく開いた口をおおっている。あわてて取り除こうとした手が一時止まった。

このまま逝ってくれたらという思いが一瞬よぎったのである。ところがタオルなど関係なく姑は大きく息を吐いた。これくらいで死ぬもんかと言わんばかりに。危うい思いはその後起きることはなかった。姑は自分も私をも救ったのだ。

一方、夜の活動は相変わらず激しい。点滴の針を抜かないよう結んである紐から手を引き抜こうとひねるので肩痛がひどい。手すりを持って寝たり起きたり、手すりを結んである紐を解こうとしたりは相変わらずだし、痛くなるはずである。