小説 『余白』 【第9回】 山本 実咲 結婚後発覚したカードローンやら何やらが、もう増えていないことを願う。額は増えていてもいいけど、せめてローン会社の数は… 【前回の記事を読む】「一人で全部育児をする。だからどうか子どもを産んでほしい」――しかし夫は家事も育児せず、これまで以上に「子ども」になった結婚前には突然右脚のふくらはぎに割と大きな柄のタトゥーを二つ入れた。何度見ても何を表現しているのか分からず、それが何なのか何度聞いても忘れてしまうのだが、夏になると毎年、せっかくだから短パンを履けばいいのに、となぜか感じてしまう。タトゥーを入れる日、私は仕事…
小説 『愛[注目連載ピックアップ]』 【第20回】 高見 純代 「セックスには相性がある」——彼は「僕らは相性がいいかもしれないな」と言ったが決して抱こうとはしてくれなかった 【前回の記事を読む】「愛してる」と言いながら、彼は私を抱いてくれない。唇にキスもしない。——私は、処女だと告げたことを後悔したBGM流れて、私は少しリラックスした。絵を描く彼は、別人のように寡黙だった。曲が変わり、『ストレンジャー』になった。それが終わり『ピアノ・マン』が流れだした時、彼が英語で一緒に歌いだした。英語の発音もよく、歌も上手だった。「貴方、歌手にもなれてよ」「モデルは黙ってて。僕は…