第6章 働くことは複雑になっている

資本主義が軋(きし)んできても根強い正社員信仰

そしてもうひとつ、労働者の意識も従前を引きずっています。生活給―終身雇用モデルは正社員のモデルであり、生活給―終身雇用モデルが限界に来ているのに、働くことのスタンダードは正社員であり、目指すべきは正社員だという意識はあまり変わっていません。

正社員になれなかったら落ちこぼれたくらいの気持ちになってしまいます。正社員信仰は根強いです。しかし企業は正社員の入り口を狭めてきており、意識と実際のギャップが生じています。

正社員を希望しても叶うのは昔よりは少なく、多くの若者が満たされない思いを抱きます。昔なら疎外されていると言うかもしれません。

しかしまた、正社員になったらなったで、さまざまな要求、責任、職務内容や就労場所や労働時間の限定のない労働が待っています。

そして正社員といえども終身雇用という保障からは見放されつつあります。一旦就職したら定年退職まで家族を養えるだけお給料をもらえるなどということは少なくなったのです。

時代的背景として、国の再興と自分たちの生活を守ることで必死だった時代から、高度経済成長の生産(力)至上主義で必死に儲けようとする時代を経て、グローバル化した資本主義は世界的に限界が見えているという時代を迎えつつあります。

そしてこのコロナパンデミック、そして地域的な戦争がグローバルな経済を巻き込むような状況で、先行きはもっと不透明になりました。