接待の日、スーツ姿の圭は東京で加藤と待ち合わせをし、予約してある料亭に向かう。二人は先に着いて料亭の入り口に立ち、高木教授の一行がやってくるのを待つ。そこに黒塗りの二台のタクシーが到着する。
最初の一台目からは二人の教授が降りてくる。二台目からはシックな黒いワンピース姿の玲子が、高木教授にエスコートされて降りてくる。
玲子がビックリしている顔の圭に向かって挨拶をする。全員の挨拶が済み、六人は料亭の女将に案内されて部屋の中に通される。
女将はまず高木教授を上座に案内し、横に立っている玲子を見て、「テレビで見る女優さんのようにお綺麗な方ですね」と声をかける。
どこに座るか迷っている玲子に、高木教授が声をかける。
「玲子、東山さんのお隣に座らせてもらいなさい」
玲子は嬉しそうな顔で圭の隣に座り、まるで他人のように頭を下げ、さしさわりのない話を始める。全員が席について料亭の女将が料理を運んでくると、加藤がすぐに席を立って高木教授に酒をつぎ、他の教授達にも酒をついで回る。
玲子は圭のぐい飲みに酒をつぎながら、丁寧な言葉づかいで話しかける。
「東山さん、この前の講演でAIを使った最新テクノロジーのお話がありましたが、グローバルプロジェクトで、毎日お仕事がお忙しいのでしょう?」
圭は玲子の口ぶりに合わせ、その質問に「えー、まあ」と適当にこたえながら、玲子にも日本酒をすすめる。
【前回の記事を読む】彼女と初めて会った日、彼女と一緒にいた男性のことが急に気になってきた。それとなく聞いてみたところ…