運命の出会い

二人は会っていろいろな話をしているうちに、お互いに強く惹かれ合うようになっていく。

その日も二人は朝からサーフィンを楽しんで、休憩のために海から上がり、砂浜に仲良く並んで腰を下ろしている。玲子が圭の濡れた頭をタオルで拭いてやりながら話をする。

「家を出る時、パパが今日も海でサーフィンかいと聞くから、東山さんはサーフィンがプロ並みで、いつも教えてもらっているのよって言ったの。パパったら、東山君は多才な男だと言って、とても感心していたわよ」

圭がちょっと笑いながら言う。

「玲子のお父さんは、とても温和で穏やかな人だよね」すると、意外な話を始める。

「パパは今でこそとても温和で穏やかな人だけど、私が小学生の頃までは仕事が忙しそうで、家の中はピリピリしていたのよ。ママはそんなパパにいつも気を使っていたわ。パパが温和で穏やかになったのは、小学校六年生の時、ママが事故で亡くなった後のことよ」

その話に「フーン」と言って、今度は圭がタオルで玲子の頭を拭いてやる。ショートの髪を後ろで縛った玲子の横顔を見ながら聞く。

「玲子はここの海にはよく遊びにきていたのかい?」玲子がなつかしそうに話をする。

「ママはこのあたりの海が大好きで、小さい頃によく私を連れてきてくれたのよ。家も西鎌倉だから近いでしょう」

その時、ちょっと離れた砂浜に、ビーチチェアを持った若い男が一人でやってくる。その若い男はリクライニングのチェアを広げて倒し、その上にサーフショーツ一枚で寝そべり、オイルを塗って体を焼き始めている。

圭はそれを見て、あの時の男のことを思い出す。

「玲子を初めて見かけたのはここの砂浜だったよな。玲子は確か誰かと一緒だったと思うけど?」

玲子はそれを聞いて、刺青男のことを聞かれていると気づく。

「圭はあの時私と一緒にいた、刺青をした男のことが気になっているのね。あの人は遠い親戚で関西に住んでいたみたい。こちらで不動産の商売を始めて財を成して大金持ちになり、ヨットハーバーに大きなクルーザーも所有しているの。あの日、私はそのクルーザーに乗せてもらって海に出たのよ」

そう言った玲子が、そこで話を変える。

「圭、もうすぐ江の島の花火大会があるでしょう。圭のマンションまで遊びに行ってもいいかしら?」

圭が笑いながら返す。

「もちろんいいよ」

玲子が花火大会の思い出を話す。