運命の出会い
二人は玲子の運転する車で帰っていき、部屋の中に入り、リビングのソファに仲良く腰をおろす。
玲子が嬉しそうに父親の話を始める。
「パパが圭のことを、東山君はなかなかの男だと言ってとても褒めるの。パパは圭のこと、とても気に入っているみたいよ」
圭はまんざらでもない顔を見せる。
「これから医学界のトップにもなろうという人から褒められ、それも悪くはないな」玲子が聞く。
「さっきトレーニングをしたジムには、千佳ちゃんもよく連れていくの?」そっけなく「何回かあるよ」と返事をする圭を、玲子が冷やかす。
「ヨッサンが、千佳ちゃんと圭はとても仲がいいと言っていたわ。千佳ちゃんは若くて可愛い娘よね」
圭が急に真面目な顔になる。
「千佳はとてもいい娘で可愛いけど、俺とは年が離れていてまだまだ子供だよ。俺は千佳のことを妹のように思っているのさ。それ以上でもそれ以下でもないよ」それを聞いて玲子が少し軽口を叩く。
「そんなこと言って、男の人は若い娘の方がいいんでしょう。正直に白状しなさいよ」圭もおどけて言葉を返す。
「そんなことはないよ。フランスのことわざで、ワインと女は古い方がいいって言うだろう」すると玲子がソファのクッションを圭に投げつける。
「千佳ちゃんが二十年もののワインで、私が三十年ものだって言いたいんでしょ」圭が自分に当たって下に落ちたクッションを投げ返す。
「あれ、玲子は六十年もののビンテージワインじゃなかったっけ?」 それを聞いて玲子がまたそのソファのクッションを投げ返すが、置いてあったコーヒーの入ったマグカップに当たり、カップがラグの上に落ちる。圭はあわててキッチンで布巾を水に濡らし、こぼれたコーヒーを拭く。