運命の出会い
ここ湘南の街々に光きらめく初夏の風が吹き抜けていき、色とりどりのツツジの花が咲き乱れると、一年を通していちばんさわやかで気持ちの良い季節がやってくる。そんな陽気に誘われ、遠くに江の島を望むことができるこのあたりの海には、たくさんのサーファー達が戻ってきている。
サーフボードを抱えたサーファーが一人、国道134号線に架かっている大きな歩道橋を渡り、防砂林を切り開いた狭い小道を歩いて通り抜けていく。その先には海岸線に沿って舗装された遊歩道があり、目の前には広い砂浜と青い海が広がって見えてくる。
日焼けした精悍な顔の圭は、砂浜の上に立って手をかざし、次々に起きている沖の波を見る。頭上には梅雨入り前の太陽が雲の間から顔を出し、ギラギラと輝き始めて肌をさす。露出した肌は紫外線でジリジリと焼け、汗ばんできて暑いくらいに感じる。
砂浜は真夏のように光を反射して眩しく、ビーチサンダルなしでは足の裏に火傷をしてしまいそうだ。サンダルをひっかけて砂浜の上を歩いていくが、乾いてサラサラした砂の中に足が沈みとても歩きにくい。圭は上半身裸で砂浜の上に荷物を置き、ウエットスーツに腕を通し、厚い胸板の上までジッパーを上げていく。ボードを抱えたまま砂浜を走っていき、勢いよく海の中に飛び込んで、大声をあげて叫ぶ。
「イエーイ、ビッグウェーブ!」
そのまま腰の高さまで進み、ボードの上に素早く飛び乗り、パドリングで沖まで漕ぎ出していった。沖には大きな波が次々に起こっていて、サーフィンには最高のコンディションだ。沖から次々にやってくる波に向かい、ボードを漕いで乗りこえ、そのまま沖で波間に浮かびながら次の大きな波を待っている。そこに沖から大きな波がやってくる。その波に向かいパドリングで加速し、素早く立ち上がって波を横切るように滑っていき、波が壁のように迫って見えるところまで進んでくる。
圭はそこで間合いをはかり、ボードを鋭く波のトップに向ける。ボードをそのまま勢いよく上向きに加速させ、空を突き抜けていきそうになる瞬間、鋭く切り返す。下向きにターンさせたボードが急激に滑り落ちていく中、また波のトップに向け鋭く切り返す。すると今度は、ボードが勢いよく滑るように波の壁を上っていく。そのまま空を突き抜けそうになる一瞬、鋭く切り返すことで、またボードと体が一体になって一気に滑り落ちていった。
この息つく暇もない一連の動きが、圭の得意とするオフザリップだ。最初に来た大きな波をとらえ、波が作る壁を滑るように進みながら、その鋭いターンの連続技を二回、三回と決めていった。オフザリップの連続技を決めた後、波が途中で崩れてしまい、体が波の中に巻き込まれてしまう。そこで素早くまた体勢を立て直し、新しい波を求めてパドリングで沖に戻っていき、大声で叫ぶ。